内申点と学習態度

内申点の評価項目を見直す動き

 2025年7月、文部科学省は、内申点(調査書点)の評価項目から「主体的に学習に取り組む態度(学習態度)」を除外する方針を示しました。これは2030年度以降の新しい評価制度に向けた大きな転換といえます。
 内申点とは、いわゆる「通信簿」に表記される科目ごとの点数で、高校入試でも得点の一部になるものです。これまで内申点は、テストの点数だけでなく、「授業中の態度」や「提出物の取り組み方」「積極性」なども含めた総合的な評価として用いられてきました。
 しかし近年、その中の「学習態度」の評価が、学校や教師によって差が出やすく客観性に欠けるのではないか、という声が高まっていました。そして今回、そういった主観が入りやすい部分を内申点から切り離す方向で見直しを始める、という発表につながったというわけです。

「学習態度」の評価の必要性

 ここでまず多くの保護者が気になるのは、「では、子どもたちが真面目に授業を受けたり、一生懸命ノートをとったりしても、それが評価されないのか」という点ではないでしょうか。
 確かに、学習態度は子どもの努力の表れでもあり、成績とは別に大切な成長の部分です。授業を一生懸命聞く、発表に挑戦してみる、友達と協力する……そうした積み重ねが子どもを育てていくのは間違いありません。ただ、それを「点数」として記録し、入試などに使う評価に含めるのは、本当に公平なのかという点が、今回の見直しの背景にあります。
 たとえば、ある先生は「元気よく発言する子」を高く評価し、別の先生は「静かにコツコツ取り組む子」を評価する・・・どちらも間違ってはいませんが、評価する側によって基準が大きく異なることになります。そうすると、生徒の性格や先生との相性によって、内申点に差が出てしまうことがあるのです。 また、「授業中に手を挙げるのが苦手」「グループ活動がつらい」と感じる子どももいます。そういった子どもたちが不利になってしまうことへの配慮も、今回の方針の背景にあるようです。

学びの本質に目を向ける機会に

 これまで、通知表の成績(評定)は、「知識・技能」「思考・判断・表現」「主体的に学習に取り組む態度」の3つの観点でつけられていました。このうち、「主体性」が成績に含まれなくなることで、先生たちの評価の仕方にも変化が起こります。つまり、「真面目に取り組んでいたから、いつも手を挙げているからプラスの評価」というような“努力や態度”ではなく、「テストの点が取れているか」「レポートで論理的に書けているか」といった成果そのものが、より重視されることになります。
 ただ、授業中の姿勢やノートの取り方、発表の意欲などを評価に反映させていましたが、それが成績に直接関係しなくなると、生徒の参加意識が薄れるのではないかという懸念の声も出ています。
 生徒にとっては、「勉強が少し苦手でも、真面目な態度で内申点をカバーする」ということが難しくなってきます。これは、とくに中間層や努力型の生徒にとって、大きな影響を与えるかもしれません。努力の姿勢や積極性が評価に入らないということは、定期テストや課題の点数がすべてを決めることにつながります。
 反対に、「発言が苦手」「目立つのが嫌」という子どもたちにとっては、良い変化ともいえます。そういう意味では、学力だけで正当に評価されるのは、公平な制度であるとも言えるかもしれません。
 これからは、授業中に行われる小テスト・確認テスト・実技試験の点数も、よりシビアに評価される可能性が高まります。また、提出物も「出したかどうか」ではなく、どれだけ理解して書かれているか、深く考えられているかが評価されることになるでしょう。内容が雑だったり、何かの丸写しだったりすると、評価に繋がらない可能性があります。
 もちろん、学習態度が評価に入らなくても、きちんとした態度で授業に臨まないといけないのはこれからも同じです。その上で、明確な結果を出して高評価を得られるように努力をしましょう。